法人化した場合の税務上のメリットとデメリット

法人成りとは

個人事業の売上が伸び、事業も拡大していくと、法人化、いわゆる法人成りを検討される事業主の方もいらっしゃると思います。

法人成りとは、個人事業者が出資者となり会社を設立し、その会社に個人事業を譲渡し、個人はその会社の役員として事業を続けていくとこです。

営業上の権利と義務は法人に帰属することになり、個人とは切り離されます。

一般的には法人の方が良いとされていますが、法人成りした方が余計なコストだけがかかる事もあります。

今回は、特に税金面でのメリットとデメリットについて、考慮すべき点を考えていきたいと思います。

個人と法人では税制が違う

損益通算の違い

個人では、同一所得区分内における損益通算は可能ですが、他の所得区分との損益通算は制限がかかります。

例えば、事業所得と給与所得、不動産所得は損益通算できますが、事業所得と株式等の譲渡所得は損益通算できません。

事業開始間もなく、開業費などの初期投資で損失が出たとしても、そのタイミングで発生した上場株式等の譲渡所得は損益通算することができず、株式等の譲渡所得に対する税負担が生じます。

所得税計算の仕組み(イメージ)(財務省ホームページ)

法人税では所得区分は存在しないので、同一事業年度内における所得はすべて合算して計算することになります。法人全体で赤字の場合は、基本的には納税は無くなります。これが個人と法人で大きく異なる点と言えます。

税率の違い

個人の所得税については、所得税と住民税を合わせて、税率15%~55%となります。

所得税の税率構造(財務省ホームページ)

法人税については、資本金等による会社規模や所得金額で変わってきますが、資本金1000万以下で設定した場合、実効税率ベースで21~33%程度となります。

個人事業の利益が出てくると、所得税の税率が高くなることから法人化することも考えられるようになります。

ただし、事業規模が大きくないうちに法人化してしまうと、法人税の方が最低税率が高い場合があるため、逆に税負担が重くなる事には注意が必要です。

法人の役員給与支給と個人事業所得による税金の違い

法人化した場合、その後の事業主体はすべて法人に引き継がれ、事業に関する収入と経費はすべて法人に帰属することになります。

法人の場合は、法人の所得になるので、そのままだと事業を引き継いだ個人には何も収入を得られなくなってしまいます。

ですので通常は法人化後に、法人から給料(役員給与)として、個人の収入を確保することになります。

例として、事業における所得が1,000万円として大まかに考えてみます。

個人の所得税の場合、事業所得1,000万円に対して青色申告特別控除65万を差し引いたとして、935万円の総所得金額となります。ここから所得控除を差し引いて、所得税が計算されます。

一方、法人で1,000万円の利益(所得)が生じた場合、そのすべてを役員給与で個人に払ったとします。法人は所得がゼロになり、税額は発生しなくなります。

その代わり個人が得た1,000万円は給与所得となり、課税対象となりますが、給与所得控除が195万円ある事から総所得金額は805万円となります。

このように、手取り額が1,000万円であっても、法人と個人事業主では税額が変わってくるのです。

その他の税務上のメリット・デメリット

事業年度を自由に決める事ができる

個人事業の所得税では、課税期間は一律で、1月1日から12月31日までとなり、翌年の3月15日までに申告をしなければなりません。

一方、法人税については、事業年度を各法人が自由に決める事ができます。

個人事業ですと、事業の繁忙期と確定申告の時期が重なってしまうことも考えられます。

これが法人の場合は、事業内容に応じて繁忙期を考慮して事業年度の始まりの時期を設定することができます。

欠損金の繰越控除

個人と法人のどちらも、欠損金(損失)の繰越控除が認められており、創業など、大きな投資で損失が多額になった場合、将来の利益と相殺することができます。

これによって、過去の投資による累積損失がある場合には、その投資による利益が出始めても、投資を回収するまでは繰越控除によって納税を抑えられるという事です。

この繰越期間が、個人と法人では大きく違ってきます。個人の所得税では最長3年、法人は最長10年間となります。

投資の規模によっては、個人の3年では短い場合もありますので、法人税の方が大きくメリットがあると言えます。

減価償却の任意償却

固定資産の減価償却については、個人事業の所得税では償却方法に基づいて強制的に減価償却が計算されます。

一方、法人では償却限度額が決められているだけで、償却費は限度額内で任意に決められ、計上しないこともできます。

前述した欠損金の繰越控除が10年の期間でできるようになり、あまり効果が無いとも言えますが、損金の調整の余地があるという事になります。

交際費、法人税では年間800万円までが損金に算入できる

所得税では、交際費の支出には特に制限がありません。事業に必要な交際費であれば、全額みとめられます。

一方、法人税では、年800万円を超える額は損金として認められません。

この点は個人事業の所得税の方が有利ですが、個人的な支出と混同しやすいので、事業関連性があるかどうかは厳密に管理する必要があります。

その他

退職金、社宅の利用など、法人化した場合の税務上のメリットは他にもあります。

しかし、法人では法人住民税の均等割の納税があり、所得が発生しなくても最低7万円は支払う必要があります。

個人の住民税が最低5千円であるため、大きなデメリットと言えます。

これまで解説してきた税率の違いや、欠損金の繰越など、総合的に考える必要があります。

また、経営管理面や対外的な信用、危険の分散、および事業の譲渡など、税務の側面以外にも、考慮するべきメリットはあります。

また法人にすると、役員が一人でも給与の支払いがあれば、社会保険に加入する義務が生じます。

このようなメリットとデメリットを総合的に検討し、実際の決算書でシミュレーションを行って、法人化の検討をすることをお勧めします。

次回は、税務以外での法人成りの特徴について解説したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

▼LINE公式アカウント始めました。友だち追加はこちらからお願いいたします。

ライン友だち追加する

関連記事