「源泉」という言葉が普段あまり使わない言葉なので、なにを意味しているのかわからないまま、源泉徴収票を受け取られている方もいらっしゃるかもしれません。
給与明細を見ると、結構税金や保険が引かれていて、総支給額と比べると手取額は減っています。この天引きされていることが源泉徴収です。
今回は、この源泉徴収について解説していきます。
源泉徴収とは
源泉とは給料や報酬の支払元の事を表しています。
給料をもらっている会社員でしたら、会社が「源泉」という事になります。
そして、「徴収」という事は、何かを取られているという事です。
源泉徴収とは、「会社などの支払元が、税務署税務署や社会保険事務所(日本年金機構)の代わりに、従業員が支払う税金(社会保険料)を、給料からあらかじめ引いておく事」です。
「税金が発生するタイミングで、あらかじめ引きます」というのが、源泉徴収の意味です。ですので、会社が給料から税金を差し引いて、会社が従業員の代わりに税金(社会保険料)を払うという手順のことと言えます。
会社はそれらのお金を預り金としてプールしておき、別途まとめて納税します。国が企業に徴収を代行させている、と考えるとわかりやすいと思います。
何を取られているか
所得税
給与所得に対して課される税金です。所得の額に応じて税率は変動しますし、課税所得を決めるまでのプロセスで所得控除などの計算があります。
そのため、天引きした額と、実際に1年が終わった時点で決まる納税額に差額が生じます。
その差額を調整するのが、年末調整という事になります。
住民税
前年度の課税所得によって、住民税額が決められます。前年度分の住民税を次の年に支払う事になりますので、勤めを開始して1年目は徴収されません。2年目から天引きが開始されるため、1年目より手取りが少なくなる事があるのはそのためです。
健康保険
勤め始めた次の月から天引きが始まります。その年の4~6月の給料を元に算出するみなし月収(標準報酬月額)を元に、健康保険の保険料が決められます。
介護保険
40歳になってから天引きが開始されます。これも標準報酬月額から決められます。
厚生年金
勤め始めた次の月から天引きが始まります。高齢者の生活を補償するための保険制度で、これについても標準報酬月額から保険料が決められます。
雇用保険
初任給から天引きが始まります。失業時に一時的に給付を受ける事ができます。会社が倒産したりして失業した場合など、次の仕事が見つかるまでの補償が受けられます。他の保険料に比べると少ない保険料となっています。
会社と社員が半分ずつ負担する保険
上にあげた項目のうち健康保険、厚生年金保険、介護保険の3つの保険は、会社と社員で半分ずつ負担することになっており、会社が社員の個人負担額と合わせて毎月協会けんぽや年金事務所に納付します。
これらの保険料、会社が半分払ってくれているという事にはなっていますが、会社から見たら人件費の一部です。
源泉徴収は年末調整と切っても切れない関係
源泉徴収で毎月差し引かれる所得税額と、実際の所得税の税額には差が生じます。所得税や住民税は、給料の金額だけではなく、「所得控除」も考慮したうえで決まります。年末調整では、1年間の実際の税額を計算しなおして、月々の給料から天引きされた額との調整が行われ、多くの場合は徴収しすぎている分が年末調整後の給料で返還されることになります。
源泉徴収は、給与所得者の納税の手間を少なくし、国から見たら、漏れなく効率的に税金や保険料を取る事もできる仕組みとなっています。
しかし、給料から天引きされ納税が行われるため、納税の実感が薄くなり、政治に参加する意識が育まれないという欠点も指摘されます。