日本政策金融公庫では、新型コロナウィルスの影響を受けた企業に対する劣後ローンの融資を行っています。
今回は、劣後ローンとはどういうことかをあらためて確認し、日本政策金融公庫の劣後ローンについてご紹介したいと思います。
JAL:劣後ローン軸に2000億-3000億円規模の調達検討-報道
www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-10-26/QISX1XT0G1L601
日本航空(JAL)が劣後ローンの活用を軸に、2000億-3000億円規模の資金を調達する検討に入ったことが分かったと、共同通信が26日報じた。報道によると、劣後ローンのほか劣後社債の発行も選択肢となるという。また、公募増資の実施も視野に幅広い資金調達の手法を銀行団と話し合うとしている。
劣後ローンとは
このニュースでも出てくる「劣後ローン」とはどういう事でしょうか?
「劣後ローン」とは、一般の他の債権より支払い順位が劣るローンのことです。
会社が倒産した場合などは、その会社の資産の整理を行います。しかし、残った資産は債権者全員に分配されるわけではなく、債権の種類によって優先順位が決まっているのです。たとえば、従業員の給与は最優先される債権とされます。
このように、残った資産の中から債権の優先順に資産が配分されると考えていただければよいでしょう。優先順位の低い債権は、自分の順番が来た時にはもうすでに資産がなくなっている、あるいは極めて少額しか残っていないということは十分に考えられます。
劣後ローンは、債権の中でも優先順位が低く設定されている借入を指します。会社が倒産する場合は、ほぼ回収できる見込みのないローンといえます。
リスクが通常の債権よりも高いので、利子も高めに設定されるのが一般的です。
この劣後ローンですが、会社が倒産した場合に回収できる可能性が極めて低いという点で、株式(特に無議決権株式)と性格が似ています。
そのため、帳簿上は債務に分類されるのですが、金融機関では自己資本(純資産)の一部とみなされます。
そのため「資本性劣後ローン」(または資本的劣後ローン)と呼ばれているのです。
実際に貸借対照表では、劣後ローンは債務と資本の中間に記載されます。
劣後ローンを持っている企業を銀行が見た場合、もし通常の融資をしたら自分たちの貸付金は劣後ローンより優先順位が高くなるので、劣後ローンは通常の負債と見なさなくてよいというわけです。
新型コロナ対策資本性劣後ローン
この劣後ローン、大企業だけの話だと思われている方も多いかもしれませんが、日本政策金融公庫で劣後ローンの融資が行われています。
新型コロナ対策資本性劣後ローンのメリット
資本性劣後ローンであれば、金融機関からは負債として見なされないので、その後融資を受ける必要があっても審査への影響が少ないと考えられます。
誰が利用できるのか
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方。ただし、次のいずれかに当てはまる方に限る。
- J-Startupプログラムに選定された方または独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けて事業の成長を図る方
- 中小企業再生支援協議会の関与のもとで事業の再生を行う方
- 上記1および2に該当しない方であって、事業計画書を策定し、民間金融機関等による支援を受けられる等の支援体制が構築されている方
融資限度額と資金目的
直接貸付 7億2千万円、「別枠」との記載があるので、ほかに借入金があっても、合算されないもの見られます。
利用目的は設備資金および長期運転資金。無担保・無保証です。
利率
ご融資後3年間は0.50%。
3年経過後は、毎年直近決算の業績に応じて、次の2区分の利率が適用されます。
税引後当期純利益額 | 期間5年1ヵ月 | 期間10年 | 期間20年 |
0円以上 | 2.60% | 2.60% | 2.95% |
0円未満 | 0.50% | 0.50% | 0.50% |
返済方法
返済期間は、5年1ヵ月、10年、20年のいずれかという事ですが、期限一括償還とありますので、期限までは利息だけの支払いで、満期時に元本を一括返済することになるようです。
なお、原則として、融資後5年間は繰上返済はできません。
新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)
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